
ローコード ガバナンス: 知っておくべきこと
ローコード ガバナンスの概要と、それが組織にとって重要である理由を解説します。
ローコード ガバナンスの概要
ローコード ガバナンスとは、ローコード開発プラットフォーム でカスタム アプリケーションを構築する際に、テクノロジを活用してビジネスのニーズに対応したソリューションを作成する従業員である 市民開発者 や専門家を、企業が導く方法です。
こうしたプラットフォームを導入すれば、コーディング エクスペリエンスを持っているかにかかわらず、従業員がグラフィカル ユーザー インターフェイスでアプリケーションを作成できます。また、テンプレートやドラッグ アンド ドロップ機能などの機能を利用することで、ビジネス プロセスを自動化するアプリの構築を加速できます。カスケード スタイル シートでアプリケーションにカスタム要素を追加する場合を除き、手作業によるコーディングは最小限で済みます。
ローコード ガバナンスは、ソフトウェア開発ライフサイクルでセキュリティとコンプライアンスを維持し、ローコード開発プラットフォームの価値を最大化します。
ローコード ガバナンスが求められる理由
ポリシー、セキュリティ手順、組織の標準に、専門家や市民の開発者を確実に準拠させるために、ローコード ガバナンスが求められます。たとえば、プラットフォーム ガバナンス フレームワークを導入すると、プラットフォームに何を構築できるか、申請のレビューと承認の責任者は誰か、IT 部門が定めるローコード開発のベスト プラクティスにどのように従うかなどを定義できます。
ローコード ツールを活用するユーザー
ローコード開発プラットフォームなどのツールを専門家や市民開発者が利用すると、手動のプログラミングに依存せずにビジネス アプリケーションをすばやく作成し、提供できます。専門の開発者はコードを記述する専門知識を備えていますが、それには時間がかかり、コードのレビューやメンテナンスも求められます。一方、開発を担当していない市民開発者も、より速くて簡単な方法を見つけ出し、仕事を終わらせることに熱心です。そのため彼らは IT 部門が認可したツールを活用して、チームのプロセスを改善するチャンスを発見できます。
市民開発者には安易にシャドー IT を利用し始める危険がともない、組織の IT チームやセキュリティ チームによるナレッジや承認を経ずにハードウェアやソフトウェアを使用することで、セキュリティ リスクを発生させる可能性があります。市民開発者に対するガバナンスによって、データ漏洩やコンプライアンス違反などのリスクを軽減できます。このガバナンス戦略の要素を次に示します。
- 市民開発者に対してルールを定義する。
- 厳格なセキュリティ要件を確立する。
- ローコード開発プログラムの対象者を特定する。
- データ セキュリティや継続的開発などの分野で市民開発者をトレーニングする。
- 使用するリソースの許可と監視を IT 部門に任せる。
ローコード開発プラットフォームを適切に実装するためには、ポリシーと戦略を明確に定義することが必要であり、市民開発者に対するガバナンスによって役割と責任を定義して、セキュリティ リスクを最小限に抑えることができます。
優れたローコード ガバナンスの特徴
ガバナンスによって、組織の目標をどのように設定して達成するか、リスクをどのように監視して対処するか、パフォーマンスをどのように最適化するかが変化します。これには、組織の方向性を決定して管理し、説明責任を持たせるプロセスが含まれます。こうした要因をローコード ガバナンスに適用することで、組織はローコード ツールを活用して関係者と信頼関係を築き、高い業績を生み出す基盤を構築して、絶え間ない変化に対応できます。
優れたローコード ガバナンスの主な特徴を次に示します。
- 管理パフォーマンスを進化させる。 管理者は優れたローコード ガバナンスを活用して、組織の目標に沿った意思決定を実現できます。さらに優れたローコード ガバナンスは、IT 部門とローコード開発者に責任を割り当て、ローコード開発プログラムを適切に設定し、市場投入までの時間を短縮します。
- テクノロジでビジネス バリューを生み出す。 ローコード開発プラットフォームは、プロセスの自動化とエラーの削減によって、優れた投資収益率 (ROI) を実現します。効果的なアプリケーションを構築する基盤を整えるために、ローコード開発に使用するツールを決定し、そのツールを使用する従業員をサポートするシステムを組織に確立しましょう。
- テクノロジに起因したリスクを軽減する。 優れたローコード ガバナンスは、ベスト プラクティスを適用してセキュリティの考慮事項を導入し、組織が使用するローコード ツールの規制要件への準拠に貢献します。一般的に組織は、リスクの軽減と管理を改善するために、こうした分野に特化したサードパーティ プロバイダーにテクノロジ ソリューションを委託します。
優れたローコード ガバナンスを取り入れる
組織のローコード開発プラットフォームを管理する方法は、組織の成功に直接的な影響を与えます。明確で簡潔なローコード ガバナンス フレームワークの確立に十分な時間と労力をかけることで、アプリケーションのパフォーマンスを高めて ROI を最大化できます。
優れたローコード ガバナンスを導入する際は、次の取り組みを組織で確実に達成しましょう。
ローコード開発プログラムを定義します。 ローコード開発者の役割と責任を明確化します。そして、シャドー IT の問題が発生する可能性を最小限に抑えるために、優れたアプリの構築に必要なリソースとサポートを開発者に提供します。
プログラムを監督する計画を立てます。 組織の IT リーダーには、ローコード開発プログラムの成功に向けた戦略を確立し、それに伴うリスクを軽減するナレッジと能力が求められます。それらは、最適なローコード開発プラットフォームを選定して、ローコード開発者にガイダンスとサポートを提供する上で必要になるでしょう。
トレーニング計画を確立します。 トレーニングを開始する前に、ローコード開発に興味を示し、基本的なデータやテクノロジのナレッジを備えた従業員を特定することが重要です。トレーニングには次の方法を含めます。
- 選択したプラットフォームを活用する。
- ベスト プラクティスを取り入れる。
- 構築が必要なアプリケーションの計画を立てる。
- セキュリティ、コンプライアンス、アクセス許可、管理手法を理解する。
セキュリティとコンプライアンスの要件をすべて特定します。 セキュリティとコンプライアンスの要件を満たすために、組織に効果的なデータ管理ポリシーを整備します。このポリシーには、データの利用、データの共有、データの保持に関するガイドラインを設定します。たとえば、データベースの作成をローコード開発者に許可しないと取り決めることで、データの重複や暴露を予防できるかもしれません。
ビジネス リスクの軽減
ローコード開発プラットフォームを使用する場合、リスクを軽減する上でガバナンスが重要な役割を果たします。ガイドラインを確立して、組織に属するチームと関係者の間で要件を明確化することで、効果的なローコード ガバナンス ポリシーを構築できます。
まず最初に次のような疑問点を明らかにしましょう。
- どのユーザーにプラットフォーム上のローコード アプリケーション構築を許可しますか?
- 開発者に求められるスキルは何ですか?
- その開発者に許可する構築対象は何ですか? (たとえば、ビジネス プロセスの自動化アプリに限定しますか?)
- こうしたアプリケーションを組織の他のユーザーはどのように使用しますか?
- ローコード アプリのレビュー、承認、サポートには誰が責任を持ちますか?
ローコード開発者にアプリの構築を許可すると、セキュリティの問題を誘発する場合があります。クラウドベースのストレージやサービスを提供する企業は、アクセスの制御と許可を提供しますが、考慮すべきビジネス リスクは他にも存在します。たとえば、IT 部門が承認していないツールを使用するシャドー IT は、開発者が構築する機能に対する可視性を欠如させます。
リスクを軽減するための考慮事項を、さらに次に示します。
- ミッション クリティカルなデータを保護するために、ローコード開発ではデータの監視が不可欠です。そのため、開発者は特定の種類のデータを要求し、それをアプリで使用する前に承認を得る必要があります。
- ローコード プラットフォームを提供する企業は、セキュリティ監査、コンプライアンス認定、サービス レベル アグリーメントを示す必要があります。この透明性は、組織に適したプラットフォームを決定する際に役立ちます。
- ビジネス ロジックに問題があると、機密情報の暴露によって組織のセキュリティが侵害される可能性があります。そのため、ソフトウェア開発に適用するのと同等の保護を、ローコード開発にも適用する必要があります。
優れたローコード ガバナンスをテストによって支援する方法
通常、ローコード プラットフォームは自動テスト機能を搭載しており、ローコード開発者は開発プロセス全体でアプリケーションの機能をテストできます。多くの場合、プラットフォームで使用するドラッグ アンド ドロップ ウィジェットはテスト済みですが、カスタム コードを使用する場合は追加のテストが必要になる場合があります。また、知らないうちに作成者が API を更新する可能性があるため、API の継続的なテストが求められます。
組み込みのテスト機能は便利ですが、ガバナンス フレームワークにアプリケーションを確実に準拠させるためには、コードのレビューも重要です。こうしたコード レビューはプロの開発者が実施して、ローコード アプリケーションがタスクの要求を満たし、確立したセキュリティ要件に従ってリスクを最小限に抑えていることを確認します。コード レビューでは、機密データの暴露やセキュリティ違反を引き起こす可能性がある脆弱性を、明示的に確認します。
アプリケーションのアクセス許可が持つ重要性
運用上のリスクとセキュリティ リスクを防止するため、ローコード開発ではアプリケーションのアクセス許可を必ず適用します。アクセスの制御と許可が既に実装されたローコード プラットフォームを選定する必要がありますが、特定のアクセス要件を搭載していない場合、ローコード開発者がデータを何に使用しているのかを組織は本質的に把握できません。アプリケーションが抱える他のセキュリティ要素によっては、機密データがパブリック ドメインに暴露され、サイバー犯罪者がネットワークにアクセスする危険をともないます。
IT の専門家にアプリケーションのアクセス許可を付与することで、ローコード開発者による責任範囲を超えた高度な決定を予防できます。こうした IT の専門家には、コードを確認してガバナンスが不十分なサイトやアクセス許可が厳密ではないサイトにアプリが接続していないことを判断する、ナレッジとエクスペリエンスが求められます。
プラットフォームでコードを保護する方法
組織で使用するローコード開発プラットフォームには、セキュリティとガバナンスを組み込む必要がありますが、ローコード開発者が使用するデータ資産へのアクセスは IT の専門家が制御します。IT の専門家はプラットフォームのセキュリティ ガードレールを活用し、データを保護する上でより厳密な制御が求められるアクセス許可について警告を受け取ります。
ローコード開発の透明性を促進する 1 つの方法は、アプリケーションの構築でプラットフォームのサンドボックスを使用するように、開発者に要求することです。これにより、リソースへのアクセスを限定して、データの表示、編集、共有を行う機能を制限します。このようにプラットフォームのセキュリティを制御することで、適切なアクセス許可を持つユーザーだけにシステムへのアクセスを許可できます。
ローコード ガバナンス ソリューションを選定する
デジタル トランスフォーメーションが台頭した現代において、今こそローコード開発プログラムを最適化するチャンスです。その際は、ガバナンス、可視性、セーフガードを搭載するローコード開発プラットフォームを選択しましょう。ローコード開発者が Microsoft Power Platform を利用すると、高品質のソリューションを迅速かつ効率的に作成できます。マネージド環境 はガバナンス機能を提供し、Microsoft Power Platform の大規模な IT 管理の、簡素化、自動化、合理化を実現します。
ローコード アプリを構築できるように従業員の能力を強化して、ビジネス プロセスを最新化し、組織の機敏性を高めましょう。Microsoft Power Platform と Power Apps について詳しくご覧ください。
よく寄せられる質問
ローコードは未来のソフトウェア開発ですか?
ローコード開発はソフトウェア開発を民主化し、簡素化と迅速化を実現します。最小限のコードを記述するだけで、構築済みの機能や再利できる要素を活用し、自動化、アプリ開発、ソフトウェア開発の未来を先取りできます。ただし、このようなローコード アプリは、セキュリティやコンプライアンスの厳格な要件に準拠していないかもしれません。たとえば、負荷の高いワークロードに対して最適化されている可能性は低く、さらにスクリーン リーダーや音声入力などのアクセシビリティ要件を満たしていない場合もあります。
ローコード開発が重要である理由は何ですか?
俊敏性の強化や、市場や顧客が抱えるニーズへの迅速な対応を求められる企業にとって、ローコード開発は重要です。これにより、ローコード開発者は特定の問題に対するソリューションを短時間で作成する手段を獲得し、IT 部門によるカスタム ソフトウェアの需要を軽減できます。
どのような業界がローコード開発プラットフォームを活用していますか?
どのような業界でも、ローコード開発プラットフォームを導入してプロセスを自動化し、時間とコストを節約できます。たとえば、教育業界ではローコード アプリによって出席状況の追跡やリモート ラーニングの監視を実現でき、医療業界ではコンプライアンスに準拠した自己評価やスケジューリング アプリを患者に提供できます。
ローコード開発プラットフォームとは何ですか?
ローコード開発プラットフォームを導入すれば、コーディングの経験をほとんど、またはまったく持たない人材でも、グラフィカル ユーザー インターフェイスでアプリケーションを作成できます。さらにこのプラットフォームは、テンプレートやドラッグ アンド ドロップ機能などの機能で、ビジネス プロセスを自動化するアプリの構築を加速させます。カスケード スタイル シートでアプリケーションにカスタム要素を追加する場合を除き、手作業によるコーディングは最小限で済みます。
どのような基準でローコード開発プラットフォームを選択できますか?
ローコード開発プラットフォームを選定する際は、それを活用する方法を明らかにしましょう。たとえば目的がモバイル アプリの開発なのか、または Web アプリ ツールなのか、などです。そして、ガバナンス、アプリケーションのテスト、展開、管理などの機能を検討します。ローコード開発者がプログラミングのナレッジを備えている場合は、高度なカスタマイズを提供するプラットフォームを選択できます。そうした人材がいない場合は、より視覚的なツールを搭載するプラットフォームが、技術に明るくないユーザーに適しています。